ASIN(微BL)
「却下」
貴文さんと連れ立って神宮の家に戻った俺は、とりあえず最初に神宮での親代わりである実お父さんと咲湖お母さんに話をする事にした。
最初に貴文さんが話を始めてくれて、俺はそれに付き足すように自分の今の気持ちを伝える。けど、返ってきたのは却下の一言。
「実さん、けどこいつは本気で」
「わかっとるわい。わかっとるけどな、ええで、なんて気安く言える立場じゃないねんわしもな」
綺麗な金糸の髪をガシガシと無造作にかきむしりながら実お父さんが深く息を吐いた。
「どういう意味だよ?」
そう貴文さんが問い返せば、横にいた着物の女性━━咲湖お母さんがやんわりとした笑みを携えながら「あのね」と会話に加わってくる。
「鷹くんのお師匠さんはお父様だから、鷹くんの行動についての権限はお父様にあるのよ。私と実さんは貴方の親代わり……私生活での後見人だから、神宮の仕込み女形である貴方がこの家から出る場合はまずはお師匠さんであるお父様の許可が必要なの」
「別に俺は神宮流の女形をやめる訳じゃありません。お稽古だって今まで通りするし、お仕事だって。ただ見解を広めるために女形以外の事もやってみたいって思ってるだけで……」
「それは私もいい事だと思っているわ。舞にもいろんな経験を積む事も必要だし。けれど貴方はまだ仕込み段階なの。立派な女形芸子になる為に修練を積んでる見習いよ。見習いの内は他の芸事をするのはちょっと賛成出来ないかしら」
「それは……」
言われてみれば確かにそうかもしれない。舞にも色んな流派があって、それと同じくらいその流派ごとの癖みたいな物がある。俺が他所で神宮以外の人から修練を受けるって事は……。