くれなゐの宮


「だからせめて、二人でいるときは…その名で私を呼んでくれないか。」


おれは彼女の願いに小さく頷いた。

彼女…イハルはそれだけで十分満足したようだ。

嬉しそうにもう一つイハルの花を、おれの手のひらに乗せ、



「ありがとう、チサト。」



屈託のない笑顔を振りまいた。

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