くれなゐの宮
夜。
イハルが眠るまで傍にいるよう命じられ、部屋の片隅で静かに時が過ぎるのを待っていた。
先程までしきりに「眠れない…」と呟いていたが、ものの数分で静かになり、今はもう寝息が聞こえる。
彼女の元に歩み寄り、覗き込めば…とても安らかな寝顔で眠っていて、ほっと一息つくと同時に、自分の中で黒い感情が込み上げてきているのに気が付いた。
彼女を嫌いにはなれない。
けれど、神である彼女さえいなければと思うと、どうしても目の前の存在が許せない。
彼女を恨めない。
でも、彼女の為にどうしておれが死ななければならないのか納得がいかない。
死にたくない。
この国が許せない。
故郷に帰りたい。
嗚呼、神サエイナクナレバ。