くれなゐの宮

正直、自分が何を考えていたのかも分からないくらい混乱していた。

どうすればいいのか分からないまま、何もかもが受け入れられなくて。

気が付くと、寝台で眠るイハルの隣にしゃがみ込み、髪から簪を引き抜いていた。

そしてそれを彼女の喉元に突き立て、静止する。


無意味な葛藤だとは分かっていた。


でも自分を守るためにはこうするしかない。

生きるためにはこうするしかない。


死にたくないんだ。


まだ、おれは生きたい。



だからこうするしか―――――






まさにその簪を突き立てようとした刹那、


イハルの瞳から、涙がこぼれた。


< 21 / 119 >

この作品をシェア

pagetop