くれなゐの宮
その言葉が心に沁みわたるまで、時間はかからなかった。
おれは涙で濡れたままの手のひらで彼女の優しい手を包み返す。
そして、ただひたすらに願った。
今の言葉に偽りがないことを。
彼女がおれの命を奪うに値する価値のある者であると。
絶望も恐怖も憎しみも、等しく呑み込み、おれは…彼女に告げた。
「貴女の事が知りたい。」
「…チサト、」
「おれが何をしようと、どうせ消える命だ。
なら、いっそこの際、
貴女の全てを知ってから、おれは死ぬ。」