くれなゐの宮


泳ぐ視線。寂しそうな吐息。

イハルもまたおれと同じ被害者だと言う事を知った。


「この国は代々紅の髪と瞳を持つものが神となる伝統があるらしい。きっと私がここに来る前は、別のイゼリオの者が神として生活していたのだろうな。」


その者が私と同じように苦しんでいたかは分からないが。

と最後に彼女は付け足した。


何不自由ない生活だ。
ただの人間が突然神として崇められ、称えられ、最高級の全てを与えられる。

でもそれはきっと自由ではない。



「…逃げ出したい。もう私の為に犠牲になる人を見たくない。」


イハルは何度も訴えた。

もう生贄など欲しくないと、ひとりで何の問題も無いと。


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