くれなゐの宮
沢山の生贄がいた。
老若男女様々な国の者が来た。
幼子もいた。
だが大抵死にたくないと泣き叫び、喚き、狂ってしまうばかりだった。
「私を殺そうとする者も沢山いた。
でもそれは間違ってはいない。
とても人間らしい行為だ。
何故こんな娘の為に、自分が死ななければならないのか。
……寧ろその時に殺されてしまえばと、どれ程祈っただろう。」
ふと、彼女に視線を投げかけられ心臓が跳ね上がった。
思わず視線を逸らしたおれを見て、彼女は静かに微笑む。
――昨日のことを気付かれた?
それとも気づいていたのか…?
どちらにせよ今はどうすることもできない。
それに今のおれはもう、そんな物騒な事は考えていない。