くれなゐの宮
ここから…次の生贄を選んでいたのか。
いつも見上げていた宮の壁を忘れるわけがない。
記憶を辿れば、ここがどこに位置しているのか容易に分かった。
突如なんとも言えない吐き気に襲われて、おれはその場に膝をついた。
耳鳴りやめまいが酷くなり、生理的に涙が溢れだす。
すると突然、混乱した脳内に低い声が響いた。
「…おい、大丈夫か。」
顔を上げる間もなくその何者かに担がれ、椅子に下ろされるおれ。
「……す、すみません。」
少し時間をかけて呼吸を整え、顔を上げると共に声の主からの叱責を覚悟する。
寄り道をした上に、介抱してもらうだなんて…。
だが、
そこに立っていたのは宮人ではなく…見たことも無い男。