くれなゐの宮
「何回も赴いているのだが、中々イロヒメは首を縦に振ってくれなくてな…。」
一体私の何が駄目なのか…などとぼやき、王は首を傾げる。
だが言葉とは裏腹に、まるで獲物を狩るような鋭い目つきをこちらに向けて。
最後に小さく微笑む。
「お前からも言ってやってくれないか?
私の妻になるように、と…な。」
意味深な笑みを残し、王は静かに部屋から出て行った。
扉が閉まる直前に彼を探していたであろう臣下たちの声が聞こえ、王はただの気まぐれでここに来たのだと仮定する。
おれは気持ち悪さに呻きながら椅子から立ち上がると、縋るようにして紅ノ間に急いだ。