くれなゐの宮
「待っていたぞ。」
紅ノ間に入るなり優しくおれに声をかけてくれるイハル。
その姿はとても神々しく、白い肌に朱の衣装と髪は良く映えた。
彼女が微笑むたびに装飾の鈴が揺れ…音を転がす。
少し安心したせいか、おれは座ると言うよりか崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。
「チサト?…大丈夫か、具合が悪そうに見える。」
衣装で動けない彼女の代わりに数人の宮女が来てくれたが、問題ないことを伝え、姿勢を正す。
そして再度彼女を見つめ、口を開いた。
「とても…綺麗です。」
少し照れたような困ったような表情を浮かべ、頬を紅色に染めるその仕草はなんとも可愛らしい。
イハルは「ありがとう。」と恥らいながら笑い、静かに俯いた。