くれなゐの宮

暫くしたのち、彼女はとても複雑そうな表情で俺を見ると、今日のことを口にした。
誰がどう見ても気の向かない様子の彼女は小さく息を漏らす。


「もう知っているとは思うが…今日は王と会う。」


本当に気が向かないらしい。

時間が進むにつれ、ため息の回数は多くなる。


ふと朝方会った王の事を思い出す。

確かにあの視線、あの口調で何度も迫られたら…と思うと同姓としても少し厄介だと感じずにはいられない。

しかしそれよりも。


彼女は王の事をどう思っているのだろう。


王はイハルを自分の妻にしたいと言っていた。



ならば…イハルの気持ちは…?

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