くれなゐの宮
部屋の襖が開かれた。
独特な香の匂いと共に宮人長が現れ、手を組み、頭を下げる。
私の髪を梳いていた宮女も数歩下がると深々と頭を下げた。
「イロヒメ様、供物をご用意致しました。」
私は宮人長の背後に視線を移した。
頭を下げているせいで表情は分からないが、体つきから考えて今度の供物は男…。
「…顔を上げよ。」
私がそう声をかければ、宮人長に急き立てられ…男は顔を上げる。
「………。」
漆黒の髪に、漆黒の瞳。
当たり前の様に、私とは違う。
「そなた、名を何という。」
彼は大層驚いた表情でこちらを見つめ、慌てて口を開くと早口で告げた。