くれなゐの宮
静まり返る広間。
全ての者が最悪の事態を想定した。
思わず、私の喉から悲鳴にも似た叫びが上がる。
「お願いだ…、私はまだお前と…!」
しかし、チサトは一度だけ振り返るとこう言った。
「おれは所詮生贄です。貴女の為に死ぬ駒です。…貴女の為に死ぬのなら、それがいつどこであろうと、同じことだ。」
「違う、そんなつもりは…」
「大丈夫。おれはまだ…貴女をひとりにはしない。」
「チサト…。」
そして彼は歩いて行った。
王が用意した最悪の舞台に、たった一つの剣を携えたまま…
王の目前に、対峙した。