くれなゐの宮


月明かりの眩しい頃。

目を覚ました私は、ふと左手にぬくもりを感じて視線を移した。


——包帯だらけの右手。


その手を辿ると座ったまま眠っているチサトの姿があった。

彼の顔にはあちこちに手当が施され、額にも包帯が幾重にも巻かれている。


「…チサト」


そっとその額に手を伸ばすと、気が付いたチサトが目を開けて。


「……イ、ハル様、!」


慌てて部屋の外にいる女官に知らせようとする彼を静かに引き止め、口元に人差し指を立てる。


「傷は、痛むか?」


「…少し…。でも、これくらいなら平気です。」


「そうか…。」


そう言って私が起き上がろうとすると、「いけません…!」とチサトは制止するが…構うことなく、私は彼の胸板に顔を埋めた。

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