くれなゐの宮

渋々廊下を歩いているとあちらこちらの部屋や広間で灯りが煌々と灯され、楽を奏でる者、会話を楽しむもの、短いながらも個々に充実した休息を送る人々の姿が見えた。

祭りがいよいよ今週末に迫っているせいもあるだろう。

普段は宮仕えばかりの彼らが、唯一町に出て楽しめる時だとナズが言っていた気がする。


おれは賑やかな灯りを通り過ぎ、浴場を目指して歩いた。

きっと、イハルは祭りにはいけないのだろうな。

そんな事を頭の隅で思いながら。


暫くして浴場に着いたはいいものの、



「え?包帯と薬?落ちてなかったよそんなの…」



番台係にあっさり言われてしまい、思わずがくりと肩を落とした。


一体どこに行ったんだ…。

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