くれなゐの宮
「だから言ったろ?ちゃんと連れて来るってよ。」
…どうやら、問い詰める手間が省けたようだ。
ナズはサッと周りに気づかれぬよう探していた包帯と薬をおれに渡し、「悪い」と言いたげに舌をペロリと出した。
あと饅頭が数個入った包みも。
「ナズさん…。」
彼を睨むと、ナズは頭を掻きながらおずおずと経緯を話した。
「…お前を連れて来たら福屋の饅頭くれるって言うからサァ…つい、な。」
まぁそう睨むなよ~と笑う彼を見て呆れ返る。
たかが饅頭の為に…。
他にも愚痴愚痴と悪態をついてやりたい所だったが、包帯と薬は無事見つかった。
というか取り返したワケで。
「早々に申し訳ないですが、イロヒメ様が待っておられますので…おれはこれで、ぐえ、」
帰ろうとした矢先、再びナズに襟首を掴まれ、咳き込む。