くれなゐの宮
——予想外に長い時間、それも大勢の人に見られる羽目になり、帰り道はもうヘトヘトだった。
もう二度とやるものかと心に強く決め…団子と饅頭の小包をぶら下げたまま足早に廊下を歩く。
既に辺りは静まり返り、宮の者の大半が眠りにつく頃だ。
きっと宮人長やイハルに叱責されてしまうのだろうな。
包帯と薬が服の小袋に入っている事を確認し、おれは重い気分を引き連れて一目散に紅ノ間を目指した。
「遅い!」
紅ノ間に付くが否や、案の定扉の前で宮人長に捕まり…盛大に叱責をくらった。
青筋を浮かべ大袈裟な程、怒鳴り散らす彼。
何度もぺこぺこと頭を上げるおれ。
その光景を見て宮女たちは口元を袖で隠し、くすくすと笑った。
それから何分経っただろう。
ようやく宮人長の叱責から解放されたおれはいよいよ疲れ果て、自室の扉を開けるなり寝台へ飛び込んだ———つもりだったのだが。