くれなゐの宮
おれの腕に包帯を巻き終えるとわざわざ寝台から降り、おれの近くに腰を下ろす。
空いた窓から風が流れ、星空がざわつく頃。
「福屋の饅頭と団子は銘菓で、店には毎日行列ができるそうだ。」
窓の外を眺めたままイハルは言う。
「一度でいいから食べてみたかったんだ。」
風が冷たくなるたびに少しずつ、少しずつ距離は縮まり、イハルの手がそっとおれの手に重なっていく。
お互いに顔を背けたまま、あるいは俯いたまま…。
それでも、確かな温もりが欲しくて。
「とても美味しい供物だった。でも…」