くれなゐの宮
感傷
数日が経った朝。
紅ノ間に行くなり、イハルはおれに一枚の紙を突きつけた。
何かと思い紙に目を移せば、そこにはびっしりと文字が書いてあって。
ゾッとしながらもその一つ一つに目を通せば、彼女が何を求めているのかをすぐに理解できた。
そんな彼女は朝から機嫌が悪いようで、それだけをおれに渡すと布団にくるまって寝台に戻ってしまう。
無理もない。
今日は国一番の祭が行われる日だ。
夜になれば、紅ノ宮から垂直に続く大通りは屋台で埋め尽くされ、空には沢山の花火が打ち上がるらしい。
彼女は以前から大層この祭に行きたがっていた。
しかも明日の朝祭より、今日の宵祭の方が好きなようで。
だが、彼女の立場上きっと宮からは出られない。
だからせめてもと、おれに屋台の食べ物ばかりが書かれている紙を渡したのだろう。