くれなゐの宮
その後おれは浴室掃除に向かい、大量の束子を抱えたナズと出会う。
彼から束子を受け取り掃除をする中、その話をしたところ彼はゲラゲラと笑った。
「つまりヒメ様はお前にとんでもない量のお使いを任せたって訳だ。」
「笑い事じゃないですよ。」
あまりに笑うもんだから、手に持っていた束子を投げつけてやりそうになる——衝動を寸前で堪え、再び浴槽と向き合った。
確かにとんでもない量のお使いになることは間違いない。
しかし、それ以前に彼女を一度でいいから、祭に連れて行ってやる事は不可能なのだろうか…。
そう思い宮人長に頼み込む自分の姿を想像しようとするも、あまりの恐ろしさに想像すらできない。
それに、仮に外に出られるとしても…あの容姿はいささか目立ちすぎる。
やはり無理なのだろうか…とため息を吐いた時、突如笹の葉に包まれた球体が目の前に転がってきた。