くれなゐの宮

その後おれは浴室掃除に向かい、大量の束子を抱えたナズと出会う。

彼から束子を受け取り掃除をする中、その話をしたところ彼はゲラゲラと笑った。


「つまりヒメ様はお前にとんでもない量のお使いを任せたって訳だ。」


「笑い事じゃないですよ。」


あまりに笑うもんだから、手に持っていた束子を投げつけてやりそうになる——衝動を寸前で堪え、再び浴槽と向き合った。


確かにとんでもない量のお使いになることは間違いない。

しかし、それ以前に彼女を一度でいいから、祭に連れて行ってやる事は不可能なのだろうか…。

そう思い宮人長に頼み込む自分の姿を想像しようとするも、あまりの恐ろしさに想像すらできない。

それに、仮に外に出られるとしても…あの容姿はいささか目立ちすぎる。


やはり無理なのだろうか…とため息を吐いた時、突如笹の葉に包まれた球体が目の前に転がってきた。

< 78 / 119 >

この作品をシェア

pagetop