くれなゐの宮
—―トウカと知り合ったのはつい最近のことだ。
初めて彼女と出会ったとき、彼女はまだ幼さが残る顔をくしゃりと歪め…誰にも見つからないように声を押し殺して泣いていた。
その時はなんと心優しい子なのだろうと思ったのだが、まさかこんな性格だとは。
「一杯食わされたな!」とナズに言われた時にはもう、優しさなんて消えてしまえと願ったくらいだ。
けれど、彼女が泣いていた理由は、勿論おれの気を惹くためではない。
話を聞けば、その日、彼女の大切な友人が自らを神に捧げたのだという。
つまり端的に言えば大切な友が自害したのだ。
『…あんな笑顔見たことなかった。』
泣きじゃくりながらトウカは告げた。
『あの子は神様を心底信じてたんだ、神様に身を捧げれば絶対に幸せになれるんだって。
なら仮に幸せになれたとして、どうやってその証明をするの?
神に身を捧げたら幸せになりますって、誰が言ったの?』
目を強く閉じ、震える体を抱きしめ…声を押し殺す。
『怖い。怖いよ…この宮が怖い、人を笑顔のまま殺してしまう…神が怖い…』