くれなゐの宮
『…私は、まだ死にたくない…。』
茶色の瞳にこれでもかと涙を溜めて訴えたトウカを放っておくことは勿論できず、おれはその足で彼女をナズと引き合わせた。
きっとナズなら、分かってくれるに違いないと思ったからだ。
案の定ナズは彼女の想いをしっかりと受け止めてくれた、しかし。
普段の様子からは想像もつかない程真剣な表情をして、強く告げた。
『そう思ったことは絶対に他の連中には打ち明けるな。
ここでは俺やお前みたいな感情を抱いてるヤツはかなり少数で、もしこの事が知られたらお前だけの問題じゃなくなる。
でも…きっとお前は、間違っちゃいねぇよ。』
初めて、ナズを見直した瞬間でもあった。