くれなゐの宮

ナズと引き合わせてから、トウカは見違えるほど元気になった。


「ねぇ!聞いてよチサト!ナズったら私の胸を触ろうとしたんだよ!」


「ハァ!?誰かお前の乳に興味あんだよ!
つか、お前こそさっき俺に鼻クソねじっただろうが!」


「馬鹿なの?そんな事するか!」


「てめぇ!」


いや、少々元気すぎるのだろうか。

全くお転婆すぎて適わない。

トウカがグイグイと襟首を掴むせいで、さっき飲み込んだばかりの酢飯が逆流しそうになり、思わず咳き込む。


「おい!チサトが苦しがってんだろうが!」

「あ!ごめん!大丈夫?」


いち早く気付いてくれたナズに心から感謝し、トウカに大丈夫だと伝え、なんとか事無きを得たものの…。

トウカとナズのじゃれ合いだかいがみ合いだかはその後も暫く続き、おれは朝から数度目の溜め息をどっぷりと吐いた。

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