くれなゐの宮

二人を見ている内にふと、ナズと引き合わせた際、トウカに聞かれたことを思い出す。


『“シキガミ様って…人間なの?”』


ナズのようにはなから知っているものだと思っていたため、少し驚いたのを覚えている。

また、話を聞いたところ、彼女は自らの意思で宮仕えを始めたわけではないようだ。


『家が貧しくて、それで唯一女の私が仕方なく。』


素っ気なく呟くその瞳の奥には、寂しさと重責が揺らめいて。

更に紅ノ宮の役職の中でも下に近い彼女は、シキガミの顔を間近で見たことがないという。

そんな彼女にとって大切な友人の死は、様々な意味で衝撃的だったに違いない。


“神とは何か。”


この宮で最大の疑問であり、最大の愚問。


他の奴らに話す前におれに出会えて良かったなと、ナズは心底安堵した表情を浮かべていた。

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