くれなゐの宮
『きっとヒメさんは今まで、話のできる生贄にはそうやって話してきたんだろうが…いかんせん、俺たちにこうも話をしてくれる奴はいなかったからなぁ。
もっと早くそれを知っていれば、何か違ったかもしれん。』
イハルも言っていた。今までの生贄たちは狂ってしまう者が殆どだった、と。
それに、正直自分自身驚いていたりもする。
何故生贄として死の宣告を受け、死が迫っているのにも関わらず…こうも冷静でいられるのかと。
考えれば考えるほど、何故か分からない。
けれどその度にイハルの顔が思い浮かび、心臓が高鳴った。
まるで千輪菊の花火のように、華やかで淡い気持ち―――。
『とりあえず頃合いを見て他の連中とも話を付ける。
話してくれて、ありがとな。』
最後は二人から礼をしてもらい、その日は何事もなく過ぎて行った。