くれなゐの宮
成る程?何がだ?
一体おれから何を悟ったというのだろう。
その後彼は小さく息を吐くと、何事もなかったかのように続ける。
「…だが駄目なものは駄目だ。代わりにお前が祭に行って話を聞かせて差し上げよ。その程度なら許可してやる。」
「………。」
それ以上、何を言っても無駄だった。
きっとこの先説得し続けても、宮人長の首が縦に動くことはないだろう。
目を伏せたまま静かに退室する。
あまりにも滑稽で…情けない。
大人しく紅ノ間に帰ろうと顔を上げた。
その時だった。
「!」
突如目の前に女の顔が現れ…おれはビクリと肩を震わせた。
いや、突然現れたのではなく…もともとそこに立っていたのか。
かなり驚いたものの、何とか冷静を装い再度目を合わせる。
すると、彼女は落ち着いた声で告げた。
「チサトさんにお話があります。」