くれなゐの宮
――そして視界が開ければ、唐突に広がる赤提燈の列。
大通りは目を疑うほどの美しい光景だった。
朱色に染まる世界は、一夜限りの幻想世界。
道の両端には屋台がずらりと並び、大勢の人が行き交う。
故郷とはやや重なる風景だが、久しぶりの外の空気や土の感触に懐かしさを感じずにはいられない。
そして、振り返れば後方に聳え立つ、紅ノ宮。
その仰々しい佇まいを初めて正面から見た。
地面から見上げていると、上方に小さな窓が見え…あの窓こそがいつもイハルが町を見下ろしている場所だと悟る。
もしかしたら今はコウがこちらを見ているのかもしれない。
そんなことを思いながら再び視線を戻すと、何やら手元が寂しい。
ふと視線を下げる。
…おや?
先程までいたはずのイハルがいない。
イハルがいない。
いない!?
慌てて辺りを見回すが、人が多すぎて見つけるどころの問題ではない。
思わず自分の頭を壁に打ち付けたい衝動に駆られたが、反省も程々に大急ぎで人混みの中に割り込んだ。