狼少女と王子様Ⅱ
第二章
茜色
あの日あの時
私は何もかも失った気がしていた
家族も友達も恋も
大切なもの全部
だけどそれは私に勘違いだった
失ったからこそ得たものがあったんだ
小さな幸せに気づかずに現実から目を背けて
拒んで傷ついて傷つけて
一人で生きていけると思い込んで
本当はずっと影で支えられていたのに
寂しさや悲しみを持つなんて
心が弱いからだって
私はそんな風に弱くなりたくないって
勝手に扉を閉めて鍵をかけた
でも、あなたはそんな鍵なんて容易く解いて
私の心の中に入ってくる
こじ開けることだって出来たのに
あなたは優しいから
暖かく包んで扉さえ溶かしてしまうんだ
ありがとう
そんなあなたが大好きなんだ。
「ね、凛?」
「えっ!?なんの話?」
驚いた顔で私を見るのは
鉑 凛(はく りん)
生徒会長様だ。
病院から出て数週間
相変わらずの日常を送っていた
渓はやたらと付きまとってくるし
隣の水城くんはしつこい質問はするし
海は心配性だし・・・。
はぁ・・・・。
でも、こんな日常も悪くはないかなと思えるようになってきたのは
みんなのおかげだし
まぁ、いっか・・・。