深海家奇譚
一
ーーダンッ!
バンッ!ーバンッ!ーバンッ!
この深海城で足早に襖(ふすま)を開ける音が響いていた。
「姫さま!百合(ゆり)姫さまはどこじゃあ!ーーまったく、大事な御身、少しはわきまえて頂きたいものよのォ!」
この白髪混じりの頭をがしがしと掻いている初老の男こそ、深海家老中兼教育係、
岬平目十郎(みさきだいらもくじゅうろう)という。
「じい、此処におります。」
城の廊下に凛とした声が響き渡った。
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一