~ユメノザンガイ~
『初雪』


今日
珍しくも
この地に雪が降った

久しぶりに見る雪に
はしゃいでしまうあたし



「……積もるかなぁ」

と、彼女はつぶやいた



吐く息は白く、

かじかんだ手に
雪が降りてきた



「積もるといいよね」

と、あたしは言った



「積もってもさ、
 朝にはぜーんぶ
 溶けちゃってるよ…」



灰色の低い空から
降りてくる雪は、

地に落ちた瞬間に
消えてしまう

ちっちゃな水玉模様
だけを残して



手のひらに降りた雪は

一瞬にして
水へと姿を変えてしまう



「でもさ、
 残ってるかもしれない じゃん?」

あたしは彼女に
思いっきり
笑いかけた



「じゃぁ…
 賭けてみようなか…

 もしも、明日の朝
 雪が残ってたら……」



彼女の横顔は
とても切なげで
ひどく綺麗だった




あたしは白く細かな雪が
やまないように願った

彼女の願いが叶うコトを
祈った




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