誘惑~初めての男は彼氏の父~

波音

***


 ・・・私は幼い頃に、仕事中の事故で父親を亡くしていて。


 生活のために働きに出た母は夜勤が多く、その際は主に近所の祖父母の家に預けられていた。


 祖父母は優しく、暖かく私を迎え、もてなしてくれた。


 ただ・・・祖父母の家で過ごす夜は心細かった。


 古い木造住宅。


 寝室の布団の中、暗闇に目が慣れてくると、天井や柱の木目が気になって仕方なかった。


 年輪のような模様が、悪霊の顔に見えてしまうのだ。


 静けさ漂う夜の闇の中、布団にくるまってもなかなか眠れないことが多かった。


 今はもうさすがに、どんな寂しい夜であっても、年輪に怯えて眠れないことはなくなった。


 だけど時々、当時の怖さを思い出すことがある。
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