誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「ずるい人・・・」


 「言いがかりはやめてもらいたいね」


 背中からそっと抱きしめられ、耳元での囁きの後、首筋に唇が触れた。


 「やめてください」


 「本気でそんなこと、思っていないくせに」


 否定できない。


 「・・・どうしてこんなことするんですか」


 魔の手から逃れられない自分が悔しくて、思いっきり抗議のまなざしで和仁さんの目を見た。


 「理恵が可愛いから悪いんだよ」


 私の抗議など無意味であるとあざ笑うかのように、和仁さんは私の唇を塞いだ。


 「やめて・・・」


 身体が砂の上に横たえられた時、最後の抵抗を試みた右手が、花びらに触れた。


 季節外れのハマナスの花が、月明かりに照らされていた。


 「もう一度あの頃みたいに、僕だけの理恵にしてしまいたい」


 「今となっては・・・無理です」


 「ならば今夜だけでも」


 心が揺らぐ。


 でも一夜限りのあやまちで終われないのは、自分が一番分かっている・・・。
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