誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・。


 ベッドの上から、窓の外の月を眺めていた。


 まさに水平線にキスをするかのように触れて、水面下に沈み行く瞬間。


 それと入れ替わりに、空はますます明るくなってきた。


 日の出の時間が近づいている。


 「理恵に夢中で、写真を撮ろうと思うことすら忘れていた」


 いつもだったら月が沈む瞬間を、カメラに収めようとするところだけど、この日はカメラの入ったバッグはテーブルの上に置かれたまま。


 ・・・真夜中に浜辺でキスを交わしながら、夢中で求め合った。


 だけどあの場所で、最後まで至る気分にはなれなかった。


 通ってきた道は、この時間は車通りもほとんど途絶えているとはいえ、誰も来ないとは限らない。


 「・・・うちに来る?」


 車で30分ほど走れば、和仁さんの自宅。


 佑典は留守とはいえ、佑典がいつも生活している場所で他の男に抱かれるのはさすがに無理だった。


 しかも相手は、彼の父親・・・。
< 108 / 433 >

この作品をシェア

pagetop