誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「これから秋にかけて、泊りがけでの撮影が増えるんだけど・・・一緒に行かない?」


 「え?」


 「わずらわしい都会を離れて、たまにはゆっくり時を感じたいんだ」


 「・・・」


 そんなの無理ですと、簡単に却下できない。


 また昨晩のように一晩中、甘く抱かれ続けたいという心の奥底での願望から逃れられない。


 「考えておきます」


 曖昧な答えだけを残し、車を降りようとした。


 「・・・また連絡するから」


 そう言い残して、和仁さんは去って行った。


 今晩市内で、仕事に関する打ち合わせがあるとのことで、18時にはここを去らなくてはならなかった。


 ・・・一日以上ずっと一緒だったのに、こうして離れて一人に戻ってみると、突如として寂しさを感じた。


 「!」


 バッグの中の、携帯電話の振動を感じた。


 和仁さんのお別れの挨拶?


 それとも・・・。


 携帯を取り出して、ディスプレイを確認したところ、佑典からの着信だった。
< 111 / 433 >

この作品をシェア

pagetop