誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・考えておく、との曖昧な返事を口にしたのだけど、佑典は勝手にそれを是認の合図と受け取っていたようだ。


 「この前あの人、フェリーが欠航になったとか言って、急に帰ってきたよね」


 父親が出張中で留守と聞いていたので、佑典の家に遊びに行ったら、突然和仁さんが帰ってきたことがあった。


 その中止になった撮影旅行は、お盆明けに延期になっているという。


 「秋を過ぎれば、海が荒れるんだよね。今回は絶対行かなければならないって、あの人張り切ってたよ」


 北海道の北の果て、稚内(わっかない)の港から離島である利尻島(りしりとう)に渡り、一週間くらいかけて島内のあれこれを撮影してくるとのこと。


 「あの人のいる時だったら何かと照れくさいから、留守中だったらすんなり行くんじゃないかと思って」


 「・・・」


 年頃の息子を持つ親だったら・・・息子が彼女と泊りがけで出かけるとなれば、どんなことになるかだいたい想像がつくだろう。


 和仁さんに察知されるのも怖い。


 その前にこの旅行自体、倫理的にもまずいのでは・・・。


 結局私は流され、お盆明けに二人きりで旅行に行く計画は整っていた。
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