誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「それなら・・・趣味は僕にしてみない?」


 「そんなばかなこと」


 「冗談だよ。これ以上深みにはまって、佑典に知られたら・・・殺されるかな」


 それはあながち冗談では済まないように思える。


 もしバレたら・・・。


 「無用なトラブルは避けたいところだけど、好きになってしまったのだから仕方ないよね」


 「そう・・・なのでしょうか」


 佑典がオーケストラの練習などで身動きが取れない隙を狙って、私は和仁さんに会いに行く。


 浮気、もしくは不倫をしている人のように、罪悪感に苛まれながら。


 身体を重ねるだけの関係と、割り切ることもできないままに。


 今日もこうして、ホテルのベッドの上で・・・。


 「それならば理恵は、どうして会いに来るの」


 「え、私・・・」


 「まずいと思いつつも、こうして僕と。・・・佑典となかなか合う時間がなくて、寂しいから?」


 「私、寂しくなんか」


 佑典がやりたいことに夢中になっている姿を見守るのが好きで、少しでも後押しをしたくて。


 「それとも単純に・・・僕に抱かれたいから?」


 耳元に甘く囁いて、再び私を抱く。
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