誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「理恵、待ち遠しかった」


 佑典はカーテンを閉め終えて戻ってきて、私の隣に腰かけた。


 肩を抱き寄せて、


 「好きだよ・・・」


 優しく囁く。


 ゴメンナサイ、私ハアナタニ優シクサレル資格ハアリマセン。


 そう言い残してここから立ち去るラストチャンスだった。


 何事も起こらない今ならば、綺麗なままで終わらせることが可能。


 ・・・にもかかわらず、私は逃げることもできずにいた。


 私の中のずるい部分が、佑典を手放すことを恐れていた。


 結局、逃れることもできないままにキスを繰り返しながら。


 私は佑典の腕の中、ベッドにこの身を横たえた。


 望まれるがままに。


 その時、窓のカーテンが大きく揺れた。


 風が強まってきたようだ。
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