誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「今晩・・・楽しみにしてるから」


 「・・・」


 「さて準備始めるかな」


 「あ、佑典、冷蔵庫のお肉」


 振り返ったら目が合った。


 ・・・見つめ合うと何となく恥ずかしくなり、目を伏せてしまう。


 さっきあんなことがあって、これまでの二人からは一歩先に進み、さらに深い間柄となった。


 ただ「付き合う」という口約束だけではなく、身体を重ねることで繋がりは以前にまして強くなったように思える。


 とはいえ肌を晒した先ほどの記憶は、やはり恥ずかしい。


 「・・・食材の準備は、俺がやったほうがいいよね」


 ようやく佑典が口を開いてくれて、ほっとした。


 「お任せするかな」


 お恥ずかしながら調理関連は、佑典のほうが腕は上だったりする。


 日頃家事をしない(「できない」のか「やらない」のかは不明)父親の面倒を見て、亡き母親の代わりに料理の腕を磨いてきた佑典に、私はかなわない。


 野菜類のカットは佑典に任せて、私はうちわで風を送りながら火力の調節をしていた。
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