誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「ほんと、素敵な所ね」


 私は空を見上げながら深呼吸をし、そして勢いよくビールを飲み干した。


 「いい所だろ? 前に部活仲間と大人数で泊まりに来て、感動したんだ。・・・いつか好きな人と二人で来てみたいって、ずっと思っていたんだ」


 辺りに染み付いている焼き肉と炭の匂いに混ざって、大自然・・・森林の香りがした。


 「理恵と一緒に来れて、本当によかった」


 「私こそ。本当に嬉しい」


 「来年もまた来よう」


 「えっ、来年」


 ・・・来年のことどころか、明日でさえどうなるか分からないのに。


 「鬼が笑わない?」


 「笑われても構うもんか。来年も再来年も俺は、理恵と一緒にここに来たいと思ってる」


 「毎年?」


 「うん。これからもずっと、毎年夏に」


 その時佑典は、急に真面目な表情を見せた。


 「俺は理恵と、一生そばにいたい。だから将来のこと、前向きに考えてほしいんだ」


 「将来・・・」


 これから佑典が言わんとしていることが予想できて、私の胸は高鳴った。


 「卒業して就職したら、理恵と結婚したいって考えている」


 流れ星が視界をよぎった。
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