誘惑~初めての男は彼氏の父~
 二度目は幾分、私主導で。


 これまで何度も別の男の人(しかも佑典のよく知っている人)とこういうことを繰り返してきて、場数を踏んでいることを決して悟られない程度に。


 「さっきとは雰囲気違うね」


 「・・・度胸が付いたのかも」


 そっと微笑んで、腕を伸ばして枕元のルームライトを消した。


 「真っ暗で、理恵が見えない」


 「じきに暗闇に目が慣れてくるわ」


 「いいよ見えなくても。他の五感で補うから」


 「・・・もっとそばで感じさせて」


 窓から舞い込む風は優しく、素肌に夜風が触れていた。


 木の葉が揺れる音は心地よく耳元に届けられ、夢の中へと落ちていけそうだった。


 そしてすぐそばでは、愛する人の温もりを体中に確かめながら・・・。


 私は身も心も満たされているはずだった。


 それなのに二度目の今回も・・・。


 恋人に抱かれているのに愛の喜びを分かち合えないのは、この上ない天罰なのかもしれない。
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