誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・ずっと一緒にいようね」


 夢中で抱き合った後、私をいたわるかのように佑典は私の髪を優しく撫で、頬に唇を寄せた。


 「昔の自分だったら、こんな気持ちになるなんて想像もつかなかった」


 「どんな気持ち?」


 「好きな人とこうしていられるなら、何もかも捨てても構わないって思えるくらい」


 私の胸に頬を埋め、その言葉を噛みしめるように佑典は目を閉じた。


 「ありがとう・・・」


 そうとしか答えられなかった。


 真心がありがたくて、その分だけつらい。


 「理恵、好きで好きでたまらない・・・」


 そんなつぶやきを繰り返しながら、佑典はやがて眠りに落ちていった。


 ・・・気が付いたら夜は更けていた。


 周囲の棟も寝静まったようで、辺りはいっそう静けさを増している。


 聞こえてくるのは風の音と、木の葉が風に揺れる音だけ。


 「・・・」


 佑典の腕をほどいて、私はベッドを一人抜け出した。


 そして裸のままで窓辺に立ち、外に拡がる森を眺めた。
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