誘惑~初めての男は彼氏の父~
 窓辺でレースのカーテンに包まり、夜風に身を晒した。


 人通りも絶え、誰も見る人はいないとは思うのだけど・・・念のため。


 さっきまで熱く激しく、愛を受け止めていた身体が急速に冷めていった。


 虚しさだけが募る。


 どんなに強く抱かれ、甘い言葉を囁かれても・・・快感を得られない。


 心と身体が伴わないもどかしさを覚える。


 この期に及んで私は、和仁さんのことを思う。


 (どうしてなの。いつもはあんなに・・・)


 私を甘く乱す男との夜を思い浮かべてしまう。


 (私はあの人としている時しか・・・感じない?)


 そう結論付けるのはまだ早すぎるかもしれない。


 窓の外の森は、暗闇の中静かに揺れているように見えた。


 長い夜の闇の中で私は一人、虚しさに心乱れている。
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