誘惑~初めての男は彼氏の父~
 私は寮住まいなので、部屋に男は連れ込めない。


 佑典の家は・・・いくら和仁さん不在とはいえ、いつも和仁さんが居住しているスペースで佑典と身体を重ねる気分にはなれない。


 そうなると、二人きりになれる場所は・・・。


 国道沿いにはそのようなホテルが無数に存在していた。


 「ここでいい?」


 「お任せします」


 その中の一つを適当に選んで、立ち寄ることにした。


 「こういう所、来たことないんだよね」


 言葉を裏付けるかのように佑典は、部屋の選択の仕方がよく判らないらしく、違うボタンを押したりしていた。


 私は何も知らないふりをして、背後で黙って立っていた。


 「ふーん。従業員に会うことはないんだね。犯罪防止のために、監視カメラは付いているのかな?」


 辺りを見回しながら、佑典は先に部屋に入った。


 シャワーには私が先に入り、胸の鼓動を静めるために水温を水にした。


 ・・・自分から誘っておきながら、まるで少女のようにドキドキしている。
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