誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「会う人会う人に、可哀相可哀相言われるのに苛立った。確かに母さんの死はショックだったけど、口だけの同情の繰り返しは何もほしくなかったから」


 「うん。分かる」


 「優しい言葉を掛けられて、最初は胸に染みるんだけど。それがいつまでも繰り返されると、もういいよ! って気持ちになるんだよね」


 「そう・・・。だから勝手にかわいそうな子とレッテル貼られるのが嫌で、無理して元気な子を演じていたのかもしれない」


 「俺も同じだよ。同じだからこそ・・・俺の前では無理して演じないでほしい」


 「私が・・・演じてる?」


 「無理して求めなくても、俺はずっと理恵のそばにいるから」


 「・・・」


 佑典が突然なぜこんな話題を持ち出したのか、ようやく分かった。


 私が無理して、佑典を求めていると思い込んでいるのだ。


 失うのを恐れるあまり、身体を許して気持ちを繋ぎ止めようとしていると・・・?


 「理恵に誘われて嬉しかったんだけど、無理させてると思うと心苦しくて。・・・そんなことしなくても、絶対離れてなんかいかないから」
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