誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「!」


 また寝てしまっていた。


 辺りはすでに真っ暗、それどころか今ちょうど、終点札幌に到着したところだ!


 飛び起きて大急ぎで荷物をまとめ、下車体勢。


 夜のホームは帰宅ラッシュも一段落、そんなに人はたくさんいなかった。


 キャリーバッグをカラカラと引いて、駅の構内を移動。


 改札を出て札幌駅北口へと向かい、そこから外に出る。


 一週間ぶりの札幌。


 空気は地元のほうが断然美味しかったけど、都会の風に何となく安心感を覚える。


 駅を出て、自宅まで徒歩約十分。


 人通りも多い都心部なので、あまり危険もないのだけど・・・。


 と思いきや背後から車が近づいてきて、私に軽くクラクションを鳴らした。


 黒っぽい大きな車。


 まさか・・・ナンパ?


 こんな所で?


 最終列車などもう出てしまった時間帯に街を歩いていると、変な車が寄って来ることはたまにあるけれど、今回はだいぶ早い。


 いずれにしても気味が悪いので、そばにあったコンビニに駆け込もうとした。


 すると・・・。


 「お帰りなさいませ。お姫様」


 窓が開き、ふざけた口調でそんな言葉を。


 「和仁さん・・・!」
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