誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「ちょっと・・・! 和仁さん」


 急な行動に、私は防御の体勢を取れなかった。


 「理恵。会いたかった」


 距離を詰めて腕を回し、私を強く抱きしめる。


 「またこんなこと・・・」


 「まだ飽きるほど味わったつもりもないけど」


 「だめです、もう」


 「・・・本気でそんなこと思ってる?」


 「・・・」


 拒否できない。


 本気で手に入れようとも思えない反面、離れようと決心できずにいる自分がいる。


 会うたびに流されてしまう。


 「あっ」


 急に高いところから落とされたような感覚があった。


 地震?


 一瞬心配になったけど・・・助手席のシートを倒されただけだった。


 「え・・・冗談はやめてください」


 「こんな悪ふざけできるほど、僕は大人にはなれないけど」


 自分の年齢を自覚していない台詞を吐く。


 「ただ理恵が好きなだけ。それだけのことだ」


 倒れたシートの上。


 身体を屈めた私は押さえつけられるかのように、唇を奪われた。
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