誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「で、それからは、お母さんが一人でリエを?」


 「はい。父は労災が認定され、保険金も下りましたが、それだけではだめということで母はその後、市役所の関連団体に働きに出ました。夜勤とかもあって・・・私を育てるためとはいえ、苦労かけています」


 「そうだったんだ・・・」


 和仁さんは静かに、私の話を聞いてくれていた。


 同世代の男子とは違う、落ち着いたふるまいと静かに話を受け止めてくれる包容力に、私は惹かれ始めていた。


 「でもやっぱり、私は大学に行きたくて。母もそれを望んでいて。だから頑張って勉強して、合格してその後奨学金もらえるようにしたいんです」


 「奨学金もらえても、その他に生活費もかかるよね」


 「それが問題なんです。バイトもしなくちゃ・・・」


 私は頭を抱えたところ、


 「大学に合格して札幌に出てきたら、一緒に住もうか」


 「え・・・」


 振り返って和仁さんを見つめたのだけど、冗談とも本気とも付かないその表情を、黙って見ているしかできなかった。


 こうして一度、関係を持っただけの女子高生相手に・・・本気で言ってるのだろうか。
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