誘惑~初めての男は彼氏の父~

夏の終わり

***


 暦が九月に入っても、暑い毎日が続いていた。


 例年だったらもう秋の気配がしていても不思議はないのに、この年は依然として夏のような気候だった。


 大学はまだ夏休み。


 佑典とは普通通りに交際を続けていた。


 時折佑典不在の隙を突いて届けられる和仁さんからの誘惑に、戸惑いとときめきを感じながら。


 和仁さんは撮影のスケジュールが立て込んでいるようで、ここのところは電話やメールでの交信のみ。


 佑典も部活の練習が忙しく、夏休みだからといって毎日ずっと会っていられるわけじゃない。


 私もバイトがあるし・・・。


 そんな日々の合間を縫って、会う約束を交わしデートを重ねる。


 食事をした後、映画に行ったりスポーツ観戦やら美術館巡りなど。


 それらは今まで通りだけど・・・先日旅行に出かけて初めて関係を持って以来。


 デートのたびに、そういう展開になることが多くなった。


 以前は一緒にいるだけで十分だったはずなのに。


 一たび一線を越えてしまうと、お互い身体を重ねて「愛」を確かめ合わないと、何か不安になるのだった。
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