誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・。


 「むやみに体だけを求め合う関係にはなりたくなくて、節度ある付き合いをと自分を律していたけれど」


 抱き合った後。


 そばに横たわる私の背中を、愛おしそうに撫でながら佑典が告げる。


 「一度味を知ってしまえば、もう以前のように自分を抑えていられない。・・・こんなに愛しい人に触れずにいたなんて」


 その言葉を行為で示すためか、佑典はぎゅっと私を抱きしめた。


 「私も・・・」


 与えられた分だけ応えようと、私も佑典を抱き返す。


 それが答えであると、体で伝えたくて。


 ・・・依然として。


 どんなに強く抱かれていても、燃え尽きるような心地を得られないままでいる。


 唇を重ねたり、触れ合ったりという愛情を示す行為には、この上ない充足感に満たされるにもかかわらず。


 一つになった際に、この身を貫くような痛みに襲われることには変わりない。


 なぜ・・・。
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