誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「今年の夏は、理恵と一緒に過ごせて本当によかったよ」


 ただ見つめ合うだけの関係から、一歩先まで進んだ夏。


 もう触れ合うことなしではいられない。


 「毎日でも会っていたいんだけど・・・。週明けからついに合宿だ」


 「あ・・・」


 オーケストラ部の合宿。


 道内の山奥の合宿所で、一週間缶詰。


 当然会えない日々が続く。


 「この前の関東でのコンクールよりも、長い間会えないね」


 その時よりは距離は近いとはいえ、山奥に隔離されているため会うことは不可能。


 「長すぎるよ・・・。理恵の温もりを忘れてしまいそうで怖い」


 記憶を体に刻み付けるかのように、佑典の腕の力は強まった。


 離れるのが怖いのは、私の方が上かもしれない。


 一たび体が離れてしまえば、私はまた・・・。
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